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アロマテラピー体験と癒し

その10

 「癒し」ばやりの今日このごろである。なんだか一時のブームに終わらず、ここ最近定着してきた感がある。「癒し」という言葉は「健康」という言葉の持つ多少、ストイックな感じとは対極にあるような気がする。「健康」を維持するためには、我慢するべきことや、やらなければならないことが多い。しかし「癒し」はそんな厳しいムードがない。ただひたすらソフトな感じだ。で、何でもかんでも「癒し」である。「癒し」系アイドル、「癒し」系女優に始まって、「癒し」系の塩川大臣。いったい何をどう癒してくれるのかわからないが、当分このブームは続きそうだ。この癒しブームのひとつとして、アロマテラピーも最近、女性の間で人気だ。足や手に香油を塗ってリラックスさせるというもの。私はこれがしたくてたまらなかった。ただ、だいたい1万円以上はする。ちょっと勇気がいるため、なんとなくこのテのサロンを訪れることがなかった。ところが、先日、那須に住む友人宅を訪ねた際、彼女の提案で、ある高級ホテルのアロマテラピーを体験することになった。都会の喧噪とは隔絶された静かな高原の知る人ぞ知るホテルで、まず、軽く入浴を済ませ、横になる。好みの香油の香りを選び、後は施術者に任せる。押しつけがましくない笑顔がすてきな女性のなめらかな指で、ゆったり身体に香油を塗られる。気持ちよくなったらそのまま寝てもいいそうだ。案の定、ハッとしたときは、小部屋にあの女性はいなかった。「おめざめですか」との静かな声で私は現実に引き戻された。そうか。寝てしまったか。しかし、あの眠りの心地よさは最高だ。香りの魔術というか、ちょっとあやうい感じさえ漂う不思議にリラックスできる異空間はクセになる。終わった後のハーブティーのサービスもうれしい。1時間1万4000円なり。でも、寝てしまったのは少しだけ損をしたような気にもなった。これが私のせこいところか。一緒に体験した友人の感想も上々。しかし、その友人の夫(37才)は、昔、仕事で運良く飛行機のファーストクラスに乗る機会がめぐってきたとき、10時間以上のフライトにもかかわらず、少しでも寝たら損だと思い、眠らず、やたらとスチュワーデスを呼んで、ドリンクを注文したり、さまざまなサービスをお願いしていたそうだ。少しでも有効に「高価な時間」を使いたい。こういう考えを持った人間はたぶん、永遠に癒されないように思う。


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