トム・ハンクス主演の「キャストアウェイ」(2月初旬より公開・UIP映画)という映画をご覧になった方はいらっしゃるだろうか?宅配便会社に勤めるチャックことハンクスは飛行機事故で一人無人島に流れ着く。深い絶望と果てしない孤独のなかで、チャックは火を起こし、魚をしとめ、風雨に耐え、なんとか生き抜こうとする。いつかはこの島を自力で脱出し、愛する妻のもとへ帰る日を夢見て。しかし、そんなチャックがどうしても耐えられないものがあった。それは歯の痛みである。飛行機事故に遭う前も、痛む歯を押さえるシーンがあるのだが、無人島に流れ着いた後も、それはシクシクとチャックを襲ってくる。「オレは昔から歯医者が大嫌いだったんだ。でも、この痛みはどうしたって我慢できるもんじゃない。今の俺は何でも差し出したい気分だ」とつぶやくチャック。なにしろ、無人島なので、歯医者はもちろんいないし、薬もない。では、チャックはどんな行動に出たか? ある夜、痛みを増す歯を押さえながら、一緒に流れ着いたアイススケートの靴のエッジを痛む歯に当て、片方の手で石を握り、これから自分を襲ってくるであろう痛みと恐怖に泣きながら「ワン・ツー・スリー」でその石で思い切りエッジを横殴りしたのである。悲鳴とともに、あまりの痛さに気を失うチャック。麻酔なしの抜歯。この映画の中で一番「痛い」シーンである。手や腕を切るより、拳銃で胸を撃つよりも、リアルに観客にとって孤独の恐怖と痛みが迫ってくる。なぜなら、拳銃で腹を撃たれた経験を持つ人は少ないが、歯痛を経験している人は多いはずだからだ。 歯の痛みというのはどうして、いつもとんでもないときに襲ってくるのだろう。そして、どうにも我慢ができずに、覚悟して歯科医院に向かう日に限って、どうしていつも休診なんだろう。そして、休診日の土日祝日をなんとかやりすごして、月曜日になれば、朝イチで歯医者にかけつけるぞ、と決心したら、月曜日はどうして痛みがひいてしまうのだろう。そしてつい、「まあ、今度痛くなったときでいいか」と思いなおし、市販の痛み止め等でお茶をにごし、やり過ごす。結果、歯医者から足が遠のく・・。「のどもと過ぎれば熱さ忘れる」の具体例である。 しかし、この映画の「歯」のシーンはコワイ! 見終わったあと、早いとこ歯医者に行って、ムシ歯だけは治しておこう、と思った人は多いはずだ。
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