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年をとるということ

その3

 「お若いですね」と他人に言われて、うれしく思わない人はまずいないだろう。実年齢より若く見えるということはほめ言葉であり、「そのお年には見えませんね」などと言われると、まんざらでもない気分になる。だが、これらの若さをたたえる言葉の裏には、若いことイコール良いこと、すばらしいことという社会通念が見え隠れしている。「老い」はネガティブなことであり、いつまでも若くはつらつと、生きがいを見つけて元気でいることこそが理想の老人像であるような社会の風潮はいかがなものだろう。テレビ番組でも取 り上げられるのは地域社会で活躍する「異様に元気な」老人だけ。そして司会者は決まって「お若いですね〜。80才には見えませんよね」などというコメントを発する。それはそれですばらしいことだとは思うのだが、なんだか、年をとるのも許されないような世の中だなあ、と感じるのは私だけだろうか。若 いときのような野心も物欲もひとまず落ち着き、子のため人のためでもなく、ただ自分のためだけに生きること。そんな時期が老人期ではないだろうか。それならばむしろ、年をとることは楽しい。生きがい探しもいいが、ぼんやり無為な時間を過ごす。他人の言葉や社会のつくりあげた老人像におどらされす、「まあ、なるようになるさ」という開き直りの心でゆっくりと老いていきたいように思う。それには社会保障などの問題もクリアしなければいけないことはもちろんだが・・。老いて、さまざまなことを始めるのも結構。だが、ただ老いることに身をゆだねるのも、ひとつのかたちであるように思う。20年後、30年後、私が心身ともに老いを受け入れたとき、願わくば「老人は元気でなくてもいい」時代になっていてほしい。


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